古市憲寿「平成くん、さようなら」の感想

小説

古市憲寿さんの小説「平成くん、さようなら」を読みました。

いつも冷静で毒舌なイメージのある古市さんが描く小説ってどんなものなのだろうと好奇心で買った一冊。

知っている固有名詞も多く登場して、サクッと読めました。

あらすじ

平成を象徴する人物としてメディアに取り上げられ、現代的な生活を送る「平成くん」は合理的でクール、性的な接触を好まない。だがある日突然、平成の終わりと共に安楽死をしたいと恋人の愛に告げる。

愛はそれを受け入れられないまま、二人は日常の営みを通して、いまの時代に生きていること、死ぬことの意味を問い直していく。

なぜ平成くんは死にたいと思ったのか。そして、時代の終わりと共に、平成くんが出した答えとは――。

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感想

古市さんの文章を今回初めて読んだけど、すごく読みやすかった。

テレビで見る人や高級ブランドの固有名詞がたくさん登場していたのが印象的。

合理的で人間の感情的な部分に思いを馳せることができない平成くんと、平成くんのことをとても愛しているけれど、考え方からくる違いに傷ついてしまう愛ちゃん。

私も合理的な考え方の人が好きだし、見ていて気持ちがいいなと思うけど、今回は愛ちゃんの人間らしい非合理的な考えや想いに共感した。

イメージ的に、平成くんがまさに古市さんぽいなと思ったけど、一方で愛ちゃんの心の動きも古市さんが描いていると思うと、人間らしい感情的なところもあるのだなと安心した。

印象に残ったところ

人は月に一度会う関係を繰り返していても親密にはなれない。重要なのは短期間のうちに何度会ったかだというのだ。

決断はいつだって孤独だ。そしてそれは、結果的に誰かを傷つけてしまうことになるかも知れない。だけど、隣に彼がいることで、誰かに嫌われることを私は厭わなくなった。

人は図らずも、誰かが生きていた記憶を背負ってしまうことがある。自分の死によって、他者の記憶が永遠に失われてしまう場合がある。

僕は自分のことを合理的な人間だと思ってたけど、実は愛ちゃんと無駄話をするような時間が、とてつもなく大事だったってわかった。

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