湊かなえ「ブロードキャスト」の感想

小説

イヤミスが得意な湊かなえさんが描いた青春小説。

人間のドロドロした感情が出てくると思いきや、終始爽やかな作品でした!

あらすじ

町田圭祐は中学時代、陸上部に所属し、駅伝で全国大会を目指していたが、3年生の最後の県大会、わずかの差で出場を逃してしまう。その後、陸上の強豪校、青海学院高校に入学した圭祐だったが、ある理由から陸上部に入ることを諦め、同じ中学出身の正也から誘われてなんとなく放送部に入部することに。陸上への未練を感じつつも、正也や同級生の咲楽、先輩女子たちの熱意に触れながら、その面白さに目覚めていく。目標はラジオドラマ部門で全国高校放送コンテストに参加することだったが、制作の方向性を巡って部内で対立が勃発してしまう。果たして圭祐は、新たな「夢」を見つけられるか―。

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感想

湊かなえさんのミステリーじゃない作品、はじめてだったかも。

高校生が主人公の物語だからか、爽やかな作品だった。

登場人物に共感するというより、世に出た作品(小説や映画、ラジオドラマなど)に対する捉え方について納得した。

同じ作品を見ても、人それぞれの感想を持つし、その人の心の状態によって感じ方も異なる。

読書は、文字しか情報がないから自分の中で自由に登場人物や物語の情景について想像できるところが好きだけど、ラジオドラマもそうなのかなと思った。

ただ、個人的には湊さんがいつも描いている人の心の動きに関する描写が好きだから、そこについては物足りなさを感じてしまった。。

印象に残ったところ

こんな小さな集団でも反応は様々で、創作物を発表するということは、喜びだけでなく、恥、落胆、覚悟など、様々な感情と付き合って行かなければならないのだな、と考えさせられてしまう。

物語の受け取り方は人それぞれだということは、この分野にまったく精通していない僕でもわかっている。だから、個々の感想に、正しい、間違っている、はないはず。

「だけど、飛ぼうとしている側は、本当にできるって信じてるんだ。周りを気にしちゃ何もできない。憧れの世界に行けるなら、オタクで上等!っていうふうに」

本は、火を熾し、それが消えないよう、薪をくべるところまで自分でやらなければならない。自分でやるからこそ、好きな時や気分次第で火を熾すことができるし、炎の強弱を自分で調整することができる。誰かが作った物語を、自分の熾した火で膨らませていくから、同じものを読んでも、感想は人それぞれなのだと思っている。(中略)燃料と炎には、相性があるのだ。シアターの環境も。湿っているとき、乾いているとき、散らかっているとき。

目に映るもので価値が決まると勘違いしていたような気がする。

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