奥田英朗「ガール」の感想

小説

奥田英朗さんの「ガール」を読みました。

バリバリ働く三十代の女性が主人公の短編集。

今から十何年も前の小説だけど、力強い女たちがかっこよかった。

著者がコピーライターだからか、心に残る一文も多かった印象です。

あらすじ

わたし、まだオッケーかな。ガールでいることを、そろそろやめたほうがいいのかな。滝川由紀子、32歳。仕事も順調、おしゃれも楽しい。でも、ふとした時に、ブルーになっちゃう(表題作)。ほか、働く女子の気持ちをありえないほど描き込み、話題騒然となった短編集。あなたと彼女のことが、よくわかります。

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感想

まず、読み終えた時に男性作家さんが描いていることに驚いた。

女性同士の微妙な心の描写が上手。

5つの短編小説で、どの話の主人公も三十代のバリバリ働く女性。

独身、既婚子なし、シングルマザーがいるけど、既婚子ありの主人公がいないのは敢えてなのかな?

業務ではない部分で戦っている女性はたくさんいるし、みんなそうなんだなーと勇気づけられた。

女性には出産のタイムリミットがあるし、特にバリバリ働く女性はいやでも三十歳前後にそのことを考えると思う。

するしないも個人の自由だけど、どっちを選んでも、ちがう道があったのではと思ってしまうんだろうなぁ。

印象に残ったところ

聖子はなんとなくわかった。この男は、女房とホステスと部下しか女を知らない。

「今は『もう三十四』だけど、五年経ったら『あのときはまだ三十四だったんだ』って思うんじゃないかな」

桜井や山田に対する見方が一転した。彼らは生活がかかっている。守るものがたくさんある。そういう中で頭を下げ、上からの無理難題に耐え、生きている。それを保身とからかう自分は、無責任で世間知らずの子供だ。

潮時、か。千恵の言葉が浮かんだ。ガールでいることを、自分もそろそろやめなければならないのだろうか。年相応に生きた方がいいのだろうか。

女は生きにくいと思った。どんな道を選んでも、ちがう道があったのではと思えてくる。

デリカシーとは、小さなやさしさのことだ。

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