江國香織「はだかんぼうたち」の感想

小説

江國香織さんの「はだかんぼうたち」を読みました。

江國節が今作も最高で、登場人物たちが本当にそこに存在しているようだった。

江國さんの作品は女性が魅力的な印象を持つけれど、今回は男性たちも魅力的でした。

あらすじ

桃は35歳の歯科医。入籍間近と思われていた恋人と別れ9歳下の鯖崎とつきあい始めた。だが鯖崎は桃の親友の主婦・響子にも興味をしめす。一方、ネットで知り合った60歳の男と同棲していた響子の母・和枝が急死。亡き母の同棲相手への対応を巡り響子は夫と衝突する。そんな響子に鯖崎が接近し始め、桃は別れた恋人と再び会ってしまう…。年齢も境遇も異なる男女たちを通して恋愛、孤独、結婚の赤裸々な姿が浮かび上がる。

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感想

愛と孤独の物語。

たくさん登場する人物がみんな孤独で、でも他者からはそう見えていないこともあって、本質的だった。

結婚したり子どもができたからと言って孤独じゃなくなるわけではないし、結局一人の人生が続く。

桃だったり和枝だったり、江國さんの描く女性が自由に見えるのは孤独を受け入れているからなのかな。

ただ、この物語に出てくる人たちの中で「母親」である人たちに違和感を持った。違和感というか嫌悪感。

由紀も響子も人としては魅力的だけど、自分の母親だったら嫌すぎる。

印象に残ったところ

和枝は、感傷的になることや深刻ぶることの嫌いな女だったと山口は思う。「たいしたことじゃないわ」よく、そう言った。

時の流れ、社会や家庭が、人に強いる変化のこと。けれど桃は、自分がヒビキにときどき抱く、違和感を認めたくなかった。

自分は護られていると由紀は感じる。安全だ、と。詠介がいるときよりも、いないときの方がより強く、詠介に護られていると感じるのはおもしろいことだった。

関係はある、と思ったが、どういう関係があるのかは、咄嗟に説明できなかった。物事はみんな繋がっているのだ、というのが、そのとき頭に浮んだ唯一のこたえで、山口自身にさえ、説得力を持たなかった。

生きていようと死んでいようと、人が他者に期待できるのは、結局のところ「部分」なのだろう。

一体なぜ、わざわざ孤独になろうとするのだろう。ほんとうに、由紀にはさっぱりわからなかった。

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