五十嵐 律人「不可逆少年」の感想

小説

五十嵐 律人さんの「不可逆少年」を読みました。

なかなかむごいシーンもあってハラハラしたけど、最終的にすごく勉強になりました。

「神経犯罪学」って初めて聞いたけど、なんだかすごく納得した。

映画化してほしいと思える、一冊でした!

あらすじ

若き家庭裁判所調査官・瀬良真昼(せら・まひる)。どんな少年も見捨てない。そう決めて彼らと向き合ってきたはずだった。しかし、狐面の少女が犯した凄惨な殺人事件を目の当たりにして、信念は大きく揺らぐ。不可解なことに、被害者は全員同じ高校に縁のある人々だった。被害者遺族の男子高校生を担当する真昼は、思わぬ形で事件の真相に迫り――?

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感想

今回の物語に出てくる高校生たちの周りにいる大人たちが、本当に最低な人ばかりで腹立たしかった。

あんな風に大人に心を壊されかけたら、少年(少女)は非行に走っても仕方ないよなぁ。

加害者も、誰かに傷つけられた被害者ってことが多いんだろうね。

それと、「神経犯罪学」という分野を初めて知った。

非行や犯罪は家庭環境や不十分な教育などの社会的要因によって起きてしまうものだと思っていたけれど、

脳の構造などの生物学的要因もあると知って、妙に納得した。

今回の物語は、どちらの要因のことも理解が深まる一冊だと思う。

個人的には参考文献なども読んでみたいと思う、すごく興味深い一冊でした。

印象に残ったところ

自分の感情がわからないから、基準になる拠り所がなくて、人の気持ちも想像できない。

「不十分な教育、周囲の荒んだ環境。そういった社会的要因だけに、君たちは着目している。もっと根本的な生物学的要因・・・、つまり、脳の構造的な特徴や神経作用が非行を引き起こす可能性も考えてみるべきなんじゃないかな」

「破壊衝動を抑えられないだけで、自分の行動や結果は正しく認識している。衝動と意識は、表裏一体なの。ただ、衝動っていう水滴を溜める受け皿がないから、すぐに溢れ出る。それに、教育や周囲の環境が無意味だと言いたいわけでもない。生物学的要因と社会的要因が相互に作用して、反社会的行動を引き起こす。バイオソーシャルと呼ばれている考え方」

「子供にとってのスタートラインは、どうしたって親になる。遺伝とか・・・、そういう話じゃなくて、親の生き方を見て育つわけだから。今さら間違ってるって言われたところで、簡単に受け入れられるはずがない」

母さんが決めたルールに、僕は疑問を抱かなかった。

「自分の目で見るんだよ。いろんな生き方とか考え方を。何が正しいかは、君自身が決めることだ。最初は、歪んで見えると思う。それでも、目を背けないでほしい。スタートラインの後ろから走り始めたほうが、視野は広くなる」

『当時の医療技術では、看護師の脳に起きていた問題を解明することはできなかった。だけど、今ならそれができる。おそらく、扁桃体や前頭前皮質の腹内側部領域に欠陥を抱えていて、他人の苦しみや痛みを情動的に共感する能力を描いていた』

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