よしもとばなな「スウィート・ヒアアフター」の感想

小説

初めてのよしもとばななさん。

とにかく泣ける一冊でした。色んな人の愛や思いやりが詰まった物語。

東京と京都を舞台に描かれていて、京都に住んでいるからこそ情景を想像しやすかったです。

あらすじ

大きな自動車事故に遭い、腹に棒が刺さりながらも死の淵から生還した小夜子―恋人を事故で喪い、体には力が入らず、魂も抜けてしまった。私が代わりに死ねたらよかったのに、という生き残りの重みを抱えながら暮らしている…。惨劇にあっても消えない“命の輝き”と“日常の力”を描き、私たちの不安で苦しい心を静かに満たす、再生の物語。

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感想

何度も泣いた。

地震という言葉は一切出てこないけれど、東日本大地震の直後に書いた小説らしく、それも今回の物語りと重なって切なくなった。

積み上げてきた人生が一瞬で奪われてしまうのは本当に残酷で、主人公の小夜子のように立ち直れる人ばかりではないと思う。

ただ、小夜子もものすごく時間を掛けて再生していったように、すぐに前を向こうとしなくていいことが描かれているのが良かった。

心に残る名台詞がたくさんあって、何度も心を動かされた。

恋人への愛、両親への愛、子どもへの愛、同じ境遇の人への愛•••。

愛まではいかなくても思いやり溢れる場面がたくさんあって、とにかく泣ける。

よしもとばななさんの言葉選びや表現の仕方が好きだった。

印象に残ったところ

ぼうっとしている私を置いて、合理的ですてきな現実は体と手を組んでただただ進んでいった。つまり体のほうに合わせて自動運転してもらうことで、自分の繊細な状態にある内面を眠らせてあげていたのだ。

夜通し語り合ったり、いっしょに寝たり、旅をしたりするのではなくって、毎日ちょっとずつ、気づかない程度に思いやり合っているだけでも、しっかりと信頼のお城ができること。若すぎて勢いがありすぎた頃には、そんな淡い人間関係には気づかなかった。

決定的に変わることに憧れている人はたくさんいるけれど、決定的に変わるということの本質を見ている人はとても少ない。(中略)変わるというのは暴力的に時間をねじまげることだ。

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