林真理子「小説8050」の感想

小説

林真理子さんの「小説8050」を読みました。

社会問題にもなっている「5080問題」の物語かと思ったけれど、学校でのいじめやそれに対する裁判の話の方が印象的でした。

でも、親になる前に読めてよかった一冊です。

あらすじ

息子が部屋に引きこもって7年、このままでは我が子を手にかけ、自分も死ぬしかない――。

従順な妻と優秀な娘にめぐまれ、完璧な人生を送っているように見える大澤正樹には秘密がある。有名中学に合格し、医師を目指していたはずの長男の翔太が、七年間も部屋に引きこもったままなのだ。夜中に家中を徘徊する黒い影。次は、窓ガラスでなく自分が壊される――。「引きこもり100万人時代」に必読の絶望と再生の物語。

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感想

少し前だけど、親が自分の子どもを刺して逮捕された事件を彷彿させる物語だった。妹がいるところも。

過去のいじめが原因で引きこもりになった息子とその父親が裁判を行うことで、理解し合って再生していく。

途中から、現実的にはそんなに上手くいかないのでは?と思ってしまったけど、どうなんだろう。。

ただ、今回はいじめが原因ということになっていたけど、母親や父親も毒親要素が満載だったように感じた。

父親の傲慢さと母親の弱さが、最悪なかたちで息子に精神的なダメージを与えてしまっているように思った。

親が子どもの進路を決めつけたり、子どもの話を聞かなくなってしまうと、学校でいじめられていることなんて言えるわけがない。

子ども時代って、家庭と学校の2つしか居場所がない人が多いと思うから、そのどちらにも居場所がなかった息子は心を壊されて当たり前だよね。

裁判の描写がリアルで面白かったけど、5080問題の話としてはもう一声欲しかったです。

印象に残ったところ

私たちは傍観者であることに慣れてしまい、それがどれほど重い罪であるかを忘れてしまいます。

ああした小さなことが積み重なって、やがて大きな出来ごとへとつながったのか。自分はそれほどいけない父親だったのか。

寺本君はどのみち加害者です。加害者はいつまでたってもバカなんですよ。目を閉じればイヤなことを忘れられます。だけど被害者は違う。ずっとそのことばかり考え、自分を問い糺していく。いわば賢人となっていきます。

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