私が好きな作家さんの一人でもある朝井リョウさん。
鋭い観察眼と繊細な感情の言語化の能力が魅力的な作家さんです。
今回は、私の独断と偏見で朝井リョウさんの好きな小説TOP7をまとめてみました。
7位 ままならないから私とあなた(2016年)
あらすじ
天才少女と呼ばれ、成長に従い無駄なことを切り捨てていく薫と、無駄なものにこそ人のあたたかみが宿ると考える雪子。すれ違う友情と人生の行方を描く表題作。男が先輩の結婚式で出会った美女は、人間関係を「レンタル」で成立させる業者だった―「レンタル世界」。既存の価値観を心地よく揺さぶる二篇を収録。
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感想
2つの話が収録されていたけど、どちらも人と人との間に生まれる、「違い」についての内容だった。
「レンタル世界」の主人公と先輩、「ままならないから私とあなた」の雪子と薫、4人の感情や考え方、どれも自分の中にも存在する気がする。そして、存在していないものもある。
どの人物とも一致はしないし、どの人物にも全く共感しないということもない。
6位 星やどりの声(2011年)
あらすじ
東京ではない海の見える町で、喫茶店「星やどり」を営む早坂家。三男三女母ひとり。亡き父が残した名物のビーフシチューの香りに包まれた生活には、慎ましやかながらも確かな幸せがあった。しかし、常連客のおじいちゃんが店に姿を見せなくなった頃から、家族に少しずつ変化が。各々が葛藤を抱え息苦しくなる早坂家に、父が仕掛けた奇跡が降りそそぐとき、一家は家族を卒業する。著者が学生最後の夏に描いた、感動の物語。
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感想
「家族」について考えさせられた本。
父の死をきっかけに、それぞれが葛藤している様子がそれぞれの視点で描かれていて、何度も泣いた。
5位 少女は卒業しない(2012年)
あらすじ
今日、わたしは「さよなら」をする。図書館の優しい先生と、退学してしまった幼馴染と、生徒会の先輩と、部内公認の彼氏と、自分だけが知っていた歌声と、たった一人の友達と、そして、胸に詰まったままの、この想いと―。別の高校との合併で、翌日には校舎が取り壊される地方の高校、最後の卒業式の一日を、七人の少女の視点から描く。青春のすべてを詰め込んだ、珠玉の連作短編集。
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感想
現代的な言葉を多用していて、登場人物の感情がすっと入ってくる。
どれも高校生たちの初々しい恋の話。特に、寺田と倉橋の話が切なかったなー。
高校生って泣けば誰かが助けてくれる子どもでもないし、自立して自分で何でも決めれる大人でもなくて。
4位 もういちど生まれる(2011年)
あらすじ
彼氏がいるのに、別の人にも好意を寄せられている汐梨。バイトを次々と替える翔多。絵を描きながら母を想う新。美人の姉が大嫌いな双子の妹・梢。才能に限界を感じながらもダンスを続ける遙。みんな、恥ずかしいプライドやこみ上げる焦りを抱えながら、一歩踏み出そうとしている。若者だけが感受できる世界の輝きに満ちた、爽快な青春小説。
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感想
大学生って、お酒も解禁されるし一人暮らしを始める人も結構いて、子どもじゃないし、でも大人っていうのもなんか違う。
高校時代までは考えられなかった膨大な時間がある。その時間を全部自分で考えて過ごす。
「その膨大な時間をどうやって使うか」これは人生をどう生きるのか直結しているんだ。 そんなことを読み終えて思った。
3位 桐島、部活やめるってよ(2010年)
あらすじ
田舎の県立高校。バレー部の頼れるキャプテン・桐島が、理由も告げずに突然部活をやめた。そこから、周囲の高校生たちの学校生活に小さな波紋が広がっていく。バレー部の補欠・風助、ブラスバンド部・亜矢、映画部・涼也、ソフト部・実果、野球部ユーレイ部員・宏樹。部活も校内での立場も全く違う5人それぞれに起こった変化とは…?瑞々しい筆致で描かれる、17歳のリアルな青春群像。第22回小説すばる新人賞受賞作。
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感想
映画を見て、原作も読んでみたいと思って購入。感動した。
私もこの中に出てくる登場人物の気持ち、ほとんどが高校生活の中で経験したことのあるものだった。
高校生の頃は「学校」というコミュニティが「世界」だと思っていて、そこで生きていくのに必死だったなと思う。
2位 武道館(2015年)
あらすじ
本当に、私たちが幸せになることを望んでる?恋愛禁止、スルースキル、炎上、特典商法、握手会、卒業…発生し、あっという間に市民権を得たアイドルを取りまく言葉たち。それらを突き詰めるうちに見えてくるものとは―。「現代のアイドル」を見つめつづけてきた著者が、満を持して放つ傑作長編。
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感想
アイドルの女の子の胸中を綴った話。
アイドルの自分、好きな人の前にいる自分、学校での自分。
全て自分は自分だけど、「アイドル」という職業のもと、好きな人の前での自分を周りに認めてもらえず、自分の中で葛藤するシーンが苦しかった。
でもそんな世間の声とか、価値観に潰されずに、自分の中の価値観に従って、「選択」する愛子は、読んでいて潔く気持ちよかった。
テレビの前で笑っているアイドルもこんな葛藤をたくさんしているんだろうなと思った。
アイドルでなくなったとき、何を持っているのか。アイドルだけじゃなくて、会社員も一緒かな。
1位 スペードの3(2014年)
あらすじ
有名劇団のかつてのスター“つかさ様”のファンクラブ「ファミリア」を束ねる美知代。ところがある時、ファミリアの均衡を乱す者が現れる。つかさ様似の華やかな彼女は昔の同級生。なぜ。過去が呼び出され、思いがけない現実が押し寄せる。息詰まる今を乗り越える切り札はどこに。屈折と希望を描いた連作集。
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感想
朝井リョウさんは女子のブラックな感情が本当によく理解していて、その表現がとても上手。
私は美知代の心の動きが一番共感できる部分が多かったけど、むつ美のことが羨ましかった。
愛季のような先天的に持っている子よりも、むつ美からアキに変化できるような人のことがより好きだ。
今回は愛季や円の心の中が見えなかったのが残念だった。
でも作者は先天的にキラキラしている人よりも、そういう人になりたくてなれないような、人間的な要素を持った人に焦点を当てたかったのかなとも思う。
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