凪良ゆうさんの「滅びの前のシャングリラ」を読みました。
凪良ゆうさんと言えば、「流浪の月」が2020年本屋大賞を獲得し、話題となった作家さん。「滅びの前のシャングリラ」は本屋大賞受賞後、初めての作品ということで気になって購入。
いじめや暴力の描写が苦手なので、正直はじめの方で挫折しそうになりましたが、中盤は泣いてしまいました。凪良ゆうさんは、マイノリティーや社会的地位の低い人の描写がすごく上手です。
あらすじ
「一ヶ月後、小惑星が衝突し、地球は滅びる」学校でいじめを受ける友樹、人を殺したヤクザの信士、恋人から逃げ出した静香。そして―荒廃していく世界の中で、四人は生きる意味を、いまわのきわまでに見つけられるのか。圧巻のラストに息を呑む。滅び行く運命の中で、幸せについて問う傑作。
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感想
はじめは、「小惑星が衝突し、地球は滅びる」という非現実的すぎる設定に集中できないでいましたが、いじめを受けていたり、家庭環境に恵まれずに育った登場人物たちの感情の言語化が上手で、みるみるハマっていきました。
「流浪の月」を読んだ時にも思いましたが、凪良ゆうさんの物語に出てくる登場人物たちは、マイノリティーグループの人が多く、それがすごく興味深いです。
きっと自分にもマイノリティーになる部分もあるし、誰でもあるのだろうけど、普段軽くコミュニケーションを取るくらいではそれは見えてこないから、何でそんなことまで知っているのだろう…と不思議でした。
地球が滅びると知ってから、好きな人や大事な人に会いに行く人が多かったけど、それって普段はそうでもない人と一緒に過ごしてる人が多いってことなんですかね。
今、コロナで気軽に人に会うことが出来にくくなったけど、なんだか少しリンクしてゾッとした。
あと、人間はいつ自分が死ぬのか知ることができないけれど、それが人類が生き延びるうえですごく重要なことなのだと思いました。
みんなが知っていたら、犯罪だらけの世界になるのかも、と考えたら死ぬときなんて知らない方が幸せなのかも。
印象に残ったところ
頭と心。ぼくたちはそれを両輪で回すことがまだ下手で、制御できず、たびたびおかしな方向に向かってしまう。
まともな親の元に生まれるのも、鬼畜な親の元に生まれるのも、せいぜいバカラの9やスロット7みたいな運の差だろう。そんな不確かなものに振り回され、そのあとの長い人生に影響を及ぼされる。人間ってやつは、そもそもの造りが雑なのではないか。
信士はひどく自虐的な男だ。自分を馬鹿で腕っ節しか取り柄がないと思っている。実際そうなのだが、だから価値がないということはない。愛情はそんなものとは無関係に生まれることを信士はわかっていない。幼いころに親から愛情を与えてもらえなかったからだ。人は食べたことがないものの味を知ることはできない。
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